熱電対
熱電対の原理・種類・特徴について
熱電対の原理
2種類の異なる金属導体の両端を接続して閉回路を作り、一端を加熱するなどして、両端に温度差を生じるとその金属固有の熱起電力が発生し、回路中に電流が流れます。その現象をゼーベック効果と呼び、この原理を利用して温度を計測します。 この2種類の金属の組み合わせを熱電対と呼びます。
熱電対の起電力特性については3つの法則が確認されています。
- 均質回路の法則:金属線が均質であれば局部的に加熱をしても電流が流れないというもので、熱電対の両端が均質であれば途中の温度分布に熱起電力は影響されないことを示します。
- 中間金属の法則:回路中に異なった金属が入っても、その両端の温度が等しければこの影響は生じないというもので、熱電対温度センサーに異種金属である端子台やコネクタが使用できる理由となります。
- 中間温度の法則:回路中の中間温度が既知である場合、温接点、中間温度、基準接点それぞれの温度差から得た起電力の和と全体の起電力は等しい、というもので、熱電対の温度測定に必要な冷接点補償回路はこの原理に基づいて設計されています。
熱電対の種類
熱電対は構成金属の特徴と使用可能な温度範囲等から多くの組み合わせが規格化されており、日本工業規格(JIS)では3種類の貴金属熱電対(タイプB,R,S)と5種類の卑金属熱電対(タイプN,K,E,J,T)が定められています。
記号 | 主な構成材料 | 使用温度(℃) | 特徴 | ||
---|---|---|---|---|---|
+脚 | -脚 | 常用限度 | 加熱限度 | ||
B | Pt70,Rh30 | Pt94,Rh6 | 1500 | 1700 | JISに定められてたなかでは最も高温で使用できる。 |
R | Pt87,Rh13 | Pt100 | 1400 | 1600 | 白金系熱電対のなかでは最も多く使われている。 |
S | Pt90,Rh10 | Pt100 | 1400 | 1600 | 欧米で多く使われている。白金系熱電対はいずれも還元雰囲気に弱い。 |
N | Ni,Cr,Si | Ni,Si | 1200 | 1250 | K熱電対に比較して高温で使用でき、安定性もある。 |
K | Ni,Cr | Ni,Al | 1000 | 1200 | 使用温度範囲が広いので多く使われている。還元雰囲気に弱い。 |
E | Ni,Cr | Ni,Cu | 700 | 800 | JISに定められてた熱電対のなかで最も起電力が大きい。 |
J | Fe | Ni,Cu | 600 | 750 | 還元雰囲気に強いが+脚の鉄は酸化しやすい。 |
T | Cu | Ni,Cu | 300 | 350 | 還元雰囲気に強い、低温(300℃)で比較的特性が良い。 |
なお、使用温度は素線径によって変わるのでここでは規格で定められた最も太い素線径における使用温度を示しました。 個々の素線径における使用温度は総合カタログP17(PDF表示P18) No.30を参照下さい。 カタログダウンロード
熱電対の特徴
熱電対は同じ接触式温度センサーである測温抵抗体に比べて次のような特徴を持ちます。
- 比較的安価で、構造が単純であるため高い信頼性を持ちます。
- 広い温度範囲の測定が可能です。例えば最も多く用いられるK熱電対では0℃から1200℃までを同一の熱電対で測定が可能です。
- 素線径を選択することにより、局所的な温度の測定、応答速度の向上、信頼性の向上を図ることが可能です。
- 素線が雰囲気ガスに侵されるため、熱電対種類によっては測定可能な雰囲気が限定されます。
- 測温抵抗体と比較すると測定精度に劣ります。
- 測定に際し基準温接点を必要とするため、常温付近での温度測定には注意が必要となります。