放射温度計
放射温度計の原理・種類・特徴について
放射温度計の原理
物体はその表面から赤外線を放射しており、物体表面の温度は赤外線の量によって決まります。また赤外線は空間を伝ってエネルギーを運ぶという特徴があります。この空間を伝ってきた赤外線を光学的に読み取り、物体とセンサーを接触させることなく温度を測定する温度センサーを放射温度計といいます。
放射温度計の種類
点検やメンテナンスで威力を発揮する「ポータブル型」、温度を可視化し一目で温度分布が把握できる「熱画像型」、3,000℃を上限とする中・高温域用や高分子フィルム・ガラス測定が可能な「設置型」のラインナップを取り扱っています。
放射温度計の特徴
非接触式の放射温度計は接触式の温度センサーに比べ次の特徴を持ちます。
- 赤外線放射を温度測定に利用するため、測温抵抗体や熱電対と比べ応答速度が早くなります。
- 動いている物体の温度測定が可能です。
- 熱容量の小さい物体、熱伝導率の小さい物体、微小面積の物体の温度測定が可能です。
- 近づくことの出来ない危険な箇所や遠方からの温度測定、食品等衛生的に管理の必要な箇所での温度測定にも適しています。
- 研磨された金属のように反射率の高い物体は測定に適しません。
- より正確に温度測定をするには物体によって放射率を設定する必要があります。
- 対象物質の内部温度まで測定する事は出来ません。
放射率について
測定対象物が放射する実際の熱放射エネルギー量と、同じ温度の完全放射体(黒体)の熱放射エネルギー量の比を放射率と呼びます。
完全放射体(黒体)はそこに入射する全てのエネルギーを吸収し、その温度に対応したエネルギーを熱放射しています。放射温度計では完全放射体(黒体)の放射率を1.0として校正されており、実際の物体測定では放射率を予め設定し、それによって補正しています。
完全放射体(黒体)はエネルギーを透過または反射しませんが、殆どの物体は非黒体でエネルギーを透過または反射し、これらの関係性は「放射率+反射率+透過率=1.0」となります。
また、放射率は吸収率に等しくなります。放射率が波長域全体に亘って一定な物体を灰色体と呼び、波長により変化する物体を非灰色体と呼びます。多くの物体は灰色体ですが、ガラス・プラスチック・金属は概ね非灰色体の特性を示します。
波長について
赤外線放射の波長は1~20μmに分布します。温度測定には0.4~25μmの可視及び赤外域が利用されます。波長分布は温度によって決まり、高温測定には1.0μm等の短波長帯を、低温測定には8~14μmといった長波長帯が利用されます。